入コン沢の青ヒスイ 1

ヒスイ産地 糸魚川でも入コン沢という場所を正確に答えられる市民はわずかです。
「入コン沢」 と言うキーワードはかなりのマイナーフレーズで、地元タクシー運転手ですら場所が分からず戸惑うと思います。
入コン沢周辺住人、ヒスイ商や鉱物愛好家、鉱物学者などのヒスイ関連の関係者以外は知らないと思います。
ネットなどで入コン沢を調べても、青ヒスイ、糸魚川産、希少、採取禁止・・・・・などお決まりの受け売り文句が並び、情報量は乏しいです。
当ブログ筆者は糸魚川在住で、ヒスイ関連の仕事をしている為、地元ヒスイ商や入コン沢周辺住人との雑談する機会もあり、ヒスイ商の先輩方々や地元のご老人から聞いた入コン沢ヒスイのエピソードを紹介したいと思います。
また、入コン沢については当ブログでも数回にわたり掲載しておりますので過去記事等も参照しながら今回の記事にお付き合いいただけましたら幸いです。

糸魚川 小滝地区 夏中、野口の谷間に流れる沢一帯を現地のお年寄りの方々は、愛称と訛りで 「いりごんざわ」「いりごん」 と呼んでいる。
今から60年以上前、まだ少年だったA氏は入コン沢でよく釣りをしたそうだ。
釣れる魚はほとんどイワナだった。
釣ったイワナは持ち帰り、母親が塩焼にし、食卓に並ぶ。
入コン沢の脇に黒く大きな岩が鎮座し、少年はこの黒い巨石を釣りする際のポイントとして目印にしてたそうだ。
黒い巨石の大きさは4畳半の部屋にすっぽり収まるくらいだったと言う。
irh01.jpg
↑画像はイメージ

入コン沢 中流辺りの村落に居住していたB氏は、学校帰り川遊びをよくしていた。
真黒な巨石が入コン沢 中流脇に構えていることをよく覚えている。A氏の少年時代の記憶と一致する。
黒い巨石の大きさは現在の軽トラックを2台重ねた位だとB氏は語る。

ヒスイ研究探検家の第一人者 I氏は入コン沢中流域脇に鎮座する黒い巨石に狙いを定め、発破仕掛けたという。
B氏が学校へ行っている間に爆破されたのか、B氏は発破の爆発音の記憶がないとのこと。

黒い巨石のある場所の当時の地権者 K氏にも話を聞いたところ、発破許可したのは昭和30年以前だと記憶している。
詳しい爆破時刻は不明。

この時、爆破粉砕された黒い巨石こそ 入コン沢 青ヒスイの原石である。
現在、希少流通している入コン沢 青ヒスイはすべてこの巨石の共石である。
市民、村民は当時はヒスイという熟語すら知らない時代だったので、興味もなかったらしい。
B氏証言の現在の軽トラック2台重ねた位という大きさと言う事から、黒い巨石は推測で50t級だろうか。
発破を仕掛けたのは1954年(昭和29年)だとB氏は言う。 
B氏談話の信憑性は高い。
何故なら当時中学生だったB氏は発破で砕け散った入コン沢 青ヒスイを待機しているトラックまで運んだ当事者であり、本人が当時中学生だったとはっきり覚えているのである。
片道 250m 、往復 500mを大小のヒスイ原石を数十キロを担ぎ、1往復10円貰えたらしい。
irh04.jpg
4〜5人で数日間かけて数往復し、当時の中学生には、かなりおいしい小遣いだったとB氏は言う。(60年前の物価はラーメンが40円、コーヒーが50円位)
更にB氏は作業が終わった晩に、発破を仕掛けたI氏との会話を覚えている。
B少年「爺ちゃん この青い石は何?」
I氏「これはヒスイというガラスみたいな石だよ」「光のあるところに飾るんだよ。欲しいか?」
B少年「いらね」

まったくヒスイに興味がなかった時代と少年。
青ヒスイの価値が高まった現在、B氏 曰く 「こんな事なら爺ちゃんが帰った次の日、川で拾って集めておけばよかったよ」と、笑いながら語ってくれた。

入コン沢ヒスイ原石に発破を仕掛けた2年後、小滝川ヒスイ峡は国の天然記念物区域に指定されるが、ヒスイは緑色という固定観念から青色の鉱物は無視された。
入コン沢には発破で粉砕された大小の青ヒスイ欠片が所々落ちていたらしいがこの希少な青ヒスイはヒスイとは思われず、長い間放置された。
釣り人が入コン沢に入っても足元に転がる青ヒスイには見向きもしなかったらしい。
ところが2000年初頭頃、FMM学芸員による講演会やレポートにより青ヒスイの希少性にスポットライトがあたる。
入コン沢は天然記念物保護区域ではなかったため、鉱物コレクター著書やブログなどで入コン沢での青ヒスイ採取などが紹介され ヒスイラッシュ が勃発する。
全国のヒスイ商、ヒスイマニア、コレクターが地権者の許可なく入コン沢を徘徊し、発破の破片を我先にと持ち出しにかかる。
あまりのマナーの悪さから地権者が立ち入り禁止とし、現在に至る。
発破で砕き運ばれた入コン沢ヒスイの所在は謎だが、現在の糸魚川の入コン沢ヒスイの流通量は極めて少なく、希少性は高い。
irh02.jpg

irh03.jpg

黒く大きい巨石だったと言う面影が見られる個体。
rir03.jpg
石目、不純物に特徴がある入コン沢 青ヒスイ
黒い部分は風化した角閃石類等
rir05.jpg

現在、入コン沢 青ヒスイと呼ばれるのは60年前に爆破された巨石破片である。
方沸石の含有も多く、純粋なヒスイ輝石は少ないが、コン沢ブルーの透光性のある個体は美しく、人気が高い。
現存流通している個体の希少性からコレクターだけではなくヒスイ好きは是非とも手に入れたいアイテムとなっている。

入コン沢に関する秘話なども知っていますが、デリケートな話になるので関係者の許可や機会が得られたら語ろうと思います。

| 1/13PAGES | >>

最新記事

カテゴリー

links

archives

recent comment

profile

サイト内 サーチ

others