黒翡翠

糸魚川のとある場所、とある時。
糸魚川ヒスイのコレクターが集まり物々交換や個人売買を行う会合。
持ち込まれた糸魚川ヒスイはほとんど動くことなく、毎回が品評会よろしく個人自慢となる。


「金山谷の黒ヒスイだね」
齢80を過ぎるであろうご老人が私が握っている黒色ヒスイを指差し語りだした。

「昔は黒いヒスイは誰も採らなかったよ」
「私はね、ロウカン以外興味なかったんだよ。」
「夜ね 金山谷を歩くと、月明りで透き通っているヒスイがあってね。 そりゃ〜綺麗だったよ」

もちろん昭和初期の頃の話だろう。
その時、採ったと言う、ヒスイをご老人は大切そうに、また、誇らしげにいくつか見せてくれた。
手のひらに収まる位のサイズで驚くべき透明度の高いロウカン質のヒスイだった。
垂涎の的と言わんばかりの私の顔を見ながら、ご老人は終始穏やかな笑みを浮かべている。
「実はね、最初は おまん(糸魚川弁で あなた、お前さん など)の持っている黒はヒスイだと思わなかったんだよ」
「ただの石ころだと思って見向きもしなかったよ」
「黒石をひっくり返すとたまに緑色になっているけどキツネ石(ロディン岩)だと思ってね。」
ご老人は高らかに笑っている。
ヒスイ産地の昔話は楽しい。

糸魚川 金山谷産 黒色翡翠
黒色翡翠はヒスイの結晶自体は白色ですが、ヒスイ輝石とヒスイ輝石の間にグラファイト(石墨)が存在したもので、個体全体を見渡すと黒色に見えるヒスイです。
そして鮮やかすぎる緑色を含んだ個体もあり、私も最初はロディン岩だと思っていました。
ルーペを覗くとロディン岩とは明らかに違いがわかります。
半信半疑、フォッサマグナミュージアムの顔馴染でもある学芸員に見せると、「綺麗で濃いオンファスですね」と言われた。
緑色の正体はヒスイの発色源でもあるオンファス輝石です。

一般的な白×緑ヒスイに比べ黒×緑はインパクトがあります。
色の重なるマルチな部分でアクセサリーを制作したりすると素晴らしくなるでしょう。


金山谷の黒翡翠
もちろん現在では採取禁止区域です。

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